今日は10時半から先生と一緒に妻へ病状と今後について伝える予定。
妻とは朝からやり取りをしていたが・・・
息苦しさは改善せず、「とてもしんどい」らしい。
「スマホを打つのもしんどい」とのこと。
とりあえず「仕事の合間をぬって面会に行くから、無理しないでリラックスしてね」とメッセージを送った。
この状態で全てを伝えて良いものだろうか・・・非常に悩みどころである。
先生とも一度相談しようかな。
妻は先生から「来週も抗がん剤治療を見送りましょう。今は苦しさを取って体調を整えることに専念しましょう。」と言われたとのことだった。
それをうけて、妻も「かなりヤバそう」と感じ始めている感じだった。
やはり全てちゃんと伝えてあげないと余計に不安になっちゃうよね。
私は、先生との約束の時間に病院へ向かった。
今朝の妻とのやり取りから「今日すべてを話しても良いか」先生に相談した。
先生が言うには「今日は朝から点滴を行っており、おかげで状態が昨日よりも少し良くなっている」とのこと。
「もし話をするなら今日しかチャンスがないかもしれない」そうだ。
「とりあえずご自分で奥様の状況を確認して判断してみてほしい」と言われたので、妻に会うことにした。
病室に入ると、妻は確かに昨日よりも状態が良くなっているようだった。
妻と話をして今の状態などを確認。
「先生が現在の病状と今後について、これまで言っていなかったことも含めて全部を話してくれるけど聞きたい?」と確認した。
妻は「聞きたい」と言った。
一度病室を出て、先生と内容について打ち合わせをした。
その後、先生と看護師さんと一緒に病室に行って、妻に説明をしてもらった。
「奥様のがんはステージ4で、広範囲に転移していて根治はできず、残された人生をがんと一緒に生きていかなければならない」こと。
「今は抗がん剤治療を中断しているため、がんは進行する」こと。
「ここ1,2か月での進行具合から考えて、とても勢いが強く、このままだと早い段階で先がなくなってしまう」こと。
「だから今やるべきは、体調、体力を回復し、次の治療を行う土台作りをしましょう」と。
先生は、治療の可能性について言及し希望を残すように説明してくれた。
だけど本当のところは、抗がん剤治療は効果がないため、もう治療は出来ない・・・
というよりはやれば寿命を縮めるだけ。
つまり、症状を緩和しながら残された時間を過ごす段階へ到達してしまっているということだ。
「そうですか・・・」
妻の反応は、驚くほどあっさりしていた。
取り乱すこともなく、泣くこともなく。
「抗がん剤治療をしないのなら・・・そうですよね」
「とりあえず今は体力の回復に努めるんですね・・・」と。
妻本人は、自身の体調が悪いことは実感している。
だけど「今現在、こうやって生きているので、死に対しては実感がわかない」とのことだ。
先生が出て行ったあと、今後について話をした。
こんなとき何て言ってあげたらいいんだろう・・・
妻の気持ちも理解しきれないし、私自身が今後のことなんて考えている余裕もない。
ついつい「俺どうしたらいいんだろう・・・」なんて言ってしまう。
妻から「息子がいるんだから。しっかりしなきゃダメ。うつ病とかにならないように注意してよね」と怒られた。
そりゃそうだよね。
ごめん・・・
「息子は、私からのプレゼントだからね。大事に守ってね」とお願いされた。
「私が大好きな家も守って欲しい」と。
妻が欲しくて欲しくて、色々考えて、悩んで、苦労して、設計から携わった大事な家だ。
だから、当然しっかり守るし、息子に関しても心配しないように伝えて、一つだけ約束してもらうことにした。
そうしたら「俺も頑張れるから」と・・・
「生まれ変わっても結婚しようね。俺も探すから、俺のこと探してほしい。次、結婚するときは、もっと二人の時間を作って、また今の息子を産んで、妹も欲しいね。子供たちを大人になるまで育てて、送り出してあげようね」って。
正直、こんなこと言っている自分を見たらキモイと思うようなことを言った。
だけど、とにかく何でもいいから前向きなことを言わないと、耐えられない。
もちろん苦しいのは妻なんだろうけど、私もかなり苦しくて余裕がなかった。
「うん、そうだね、そうしよう。生まれ変わったら、ちゃんと探すよ。」と妻は言ってくれた。
他にも妻からは
「息子を気分で怒ったり、甘やかしちゃダメだよ」
「老後は息子と同じ趣味を持って、大人になっても仲良くするんだよ」
と、アドバイスももらい・・・
その後も、いろんな話をした。
昨日の妻のご家族がうちに泊まったことや、その時の出来事なんかも話したり・・・
苦しいながらも笑顔でたくさんの会話をすることができた。
妻が痛みを訴えだしてから、こんなに笑顔のある会話は初めてだった。
現状を共有できたせいなのか、私が抱えていたものもとれたような気がして、スッキリとした気持ちになっていた。
病気とは全く関係ない、どこにでもある普通の話ができて、とても嬉しかった。
いつまでも、この時間が続くといいなと感じる時間だった。
妻との会話が終わり、一旦家に帰ることに。
妻のご家族が、まだ自宅で待機しているので、報告するためである。
実は、お義母さんには妻に「本当のことを言わないで欲しい」と言われていた。
「私が聞きたくないから」と。
それは健康な今のあなたの気持ちであって
病気なのは妻だし、頑張っているのは妻だし、妻は知る権利がある。
だから真実を伝えたことを謝罪して、ご家族にも理解してもらった。
ご家族との話が終わって、しばらくすると病院から着信があった。
また妻の体調が悪化したのかドキドキしながら出ると、先生からの電話だった。
以前、がん細胞の遺伝子検査の結果が”判定不能”ということだったのだが・・・
どうやら先生が他の鑑定方法?で検査を依頼していたらしく「その中間報告があった」とのこと。
「報告によれば、かなりの確率で分子標的薬に適合しそうである」とのことだった。
「中間報告ではあるが、確率が高いことから、今日のうちに薬を飲み始めようと思う」と。
「少し改善の兆しがみえるかもしれない」との電話であった。
当然副作用の可能性もあるが「後日説明します」ということ。
私は「ぜひ治療をお願いします」と伝えた。
治療が継続できるという希望が見えたことが、何よりも嬉しく、妻の励みにもなると思う。
先生ありがとうございます。
まだ効果があるのか分からないけど・・・
妻のご家族にも、このことを伝えて、今日は解散となった。
なんか激動の二日間だった。
コメント